教授挨拶

早いもので、私が熊本大学に着任して5年が経とうとしています。“晴れの国”岡山で生まれ育ち、勝手に熊本を常夏と勘違いしてやってまいりましたので、最初は熊本の冬の寒さには参りましたし、天気予報ではノーカウント扱いの突然の激しい雷雨には驚きました。食べ物は大変美味しいので嬉しいのですが、ここ数年はコロナのせいであまり楽しめていません。阿蘇の美しく透き通るような青空を見るとコロナなんてどこにいるのかと思うこともありますが、早くコロナが収束し元の生活に戻れることを祈っています。

 

 2022年4月末の時点で、私が熊本に来てから関わった手術症例は悪性腫瘍を中心に400例を超えました。そのうち119例が何らかの再建を要する手術でしたが、振り返るとうまく行かなかった症例や救えなかった命ばかり思い出し、改めて自分の力不足を痛感します。ただ、その間に若い先生達は着実に成長し、教室全体のレベルとしては間違いなく向上していると感じています。目の前の患者様一人一人をどうするか考えているうちに過ぎ去ってしまった5年間でしたが、大学病院の大切な機能は最高の医療を提供することの他に、教育、研究という大切な柱がもう2本あります。臨床をしているだけでは不十分なのですが、私の力不足でなかなか全てを立派にこなせているとは言えません。これからは改めて教育・研究にも取り組んでいきたいと思っています。

 

 手術で声を失い落ち込んでいるのを心配していたおじいちゃんに外来で再会した際に握手を求められた時、思ったより楽だった先生、手術受けて良かった、と半分冗談でおばあちゃんに笑顔で言って頂いたとき、若い女性の患者様が無事に手術が終わった後出産した赤ちゃんを見せに連れて来てくださったとき、認知症で殆ど会話らしい会話をしたことのない定期通院中のおじいちゃんの奥様に、“この人今朝起きた時、今日は折田先生に会いに行かなんね、って言ったんですよっ!”と言われたとき、外勤先の看護師さんに5周年記念ですと名前入りのボールペンをプレゼントされたとき、そんなときに感じる喜びをエネルギーにしてその都度自分の中のエンジンをかけなおし、これからも熊本の医療に少しでも貢献できればと思っております。我々熊本大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科講座は、まだまだこれからの点も多いかもしれませんが、患者様のために働く力はどこにも負けていないと自負しております。皆様これからもどうぞよろしくお願いします。

教授 折田 頼尚 2022年5月

 

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